ビッグデータビジネスの時代 堅実にイノベーションを生み出すポスト・クラウドの戦略 / 鈴木 良介
2011/11/9発売。2015年3月の読書。
AZZLOは2009年頃から明確にビッグデータの可能性に期待と危機感を持っているが、在籍組織においては
という感じで読書しても生かせない切り口なので、後回しにして購入から時間が経った最近読んだ本。
1:もしも、あなたの会社にスティーブ・ジョブズのような経営者やスタンフォード大学卒の意欲と能力に富んだ従業員がいないのであれば、「ビッグデータ」 の活用を考えた方が良い。ビッグデータの活用は、一部の天才のみに依存することなく、堅実にイノベーションを実現するための方法となるからだ。
⇒そして “自ら考えない従業員” の代替として必須なんだよな。ビッグデータは考えさせる事も出来るし、従業させる事も出来る。
2:・「わざわざ」 回答させずとも、「おのずと」 蓄積されるデータを分析すること
・分析により得られた知見のフィードバックを個々別々に対して実施可能であること
⇒ナレッジマネジメント的な事も含まれるからな。しかしナレッジマネジメントの現実は “情報共有” だけ(知識だけ共有の労働疲弊履歴で次に繋がらない) だし、”情報を都合よく解釈して手を抜く人間” よりも複数のペッパー君に完璧にフィードバックして遂行してもらった方が経営者は良いだろうな。
共有会・勉強会なんていう、時間もカット出来る。リアルタイムに共有し続けて仮説を出して、24時間すぐ実施出来る。
そして、会社経営という枠組みだけではなく個人が “オレをオレがマネジメント” という発想が強くなるだろう。
この多重人格化に違和感を覚えるのが、一つの隙間だろうな。
3:ビッグデータの活用を視野に入れた事業遂行を行わない限り、待っているのは激化した競争環境の中での敗北と市場からの退場である。
4:「事業に役立つ有用な知見」 としては、「個別に、即時に、多面的な検討を踏まえた付加価値提供」 を行いたいというニーズを満たす知見といえる。特に販売促進活動の領域において 「パーソナライゼーション」 や 「リアルタイムマーケティング」 などといった言葉にて表現されている考え方が相当する。以前の 「20代女性は~というものだ」 といった分類に基づく施策だけではなく、個々人の興味・関心・行動動態に基づいて施策を講じたいという考えが高まっている。
⇒特に日本は単一民族なんで、短絡的なデモグラが通用しやすく “マス” という存在が維持しやすかったが、現在はそうではないからな。
更に、時間軸が速くなってるから、”今” を前提にした数カ月前の企画なんて通用しないんだよな。人として普遍的な領域はあるが、流行前提の “今” の企画は実施のタイミングでは既に手遅れと言えるw
媒体に限らずコンテンツも “リアルタイム1to1マーケティング” になると思う。”全てがオートクチュール” と言えそう。
5:壁を乗り越えた先にある便益に、世界中の誰も気がついていないのであれば、その壁を乗り越える労をあえて取る必要はないかもしれない。しかし、その壁の向こうにある、大幅な効率化・収益性の向上に誰かが気がつけば、あとは 「追いつき・追い越すこと」 を目指さざるをえない。そうでなければ、次元の違う競争力によって本業での敗北を喫するだけである。これが、利用サイド事業者において、2010年代にビッグデータビジネスに取り組むべき大きな理由である。
この4月で 「そぉいう事(新しい事)は電通がやってからで良い」 といった人のセクションに、「ビッグデータとかそぃおうの踏まえろ!」 的な号令がかかったらしいが、既に “追いつき” を目指している訳で、大変だろうと思う。
先日子会社のすごく偉いおっさんと会話した際に、「確かに危機感はあるけども、兄貴分会社が居るから、なんとかなる」 と言っていたが、”競合の範囲が今まで通りだったら” という前提な感じするな。今後はCCCや楽天等も競合となるんだが・・・。
6:現在インターネット広告では広く用いられている行動ターゲティング広告のような取り組みもフィジカルとサイバーが連携する形で進められるだろう。たとえば 「昨晩、ウェブサイト上で長時間閲覧していた商品を販売している店舗の近くを通る際に、『実物見て見ませんか?』 といった広告を即時に送る」 といった広告配信も想定される。
⇒Beaconなんかは、このフィジカルとの連動を促進させるツールだと思う。
組織でもBeacon提案は前向きだが、この連動を踏まえてないと
- “店舗の前に行くとお知らせが表示される”
程度の企画の “有難迷惑サービス” になるw
Beaconはプロモーション (マス媒体以外のお知らせ) ツールではなく、マーケティングツールだと思うな。
7:データを 「買いたい」 「売りたい」 という両者がいるのならば、取引仲介サービス (マーケットプレイスサービス) が成立する。米国ではいくつかの商用マーケットプレイスサービスが登場している。
⇒媒体の問屋ではなく、データの問屋をやらなければ生き残れないと思う。やはり
競争は国内だけじゃないので、USの知見を踏まえたサービスが全てをかっさらっていく可能性を感じる。
日本でもこぉいう危機感がやっと出てきている。(記事になりはじめている)
8:電子書籍サービスを例に考えると、クラウドから端末に対しては電子書籍データが流れる (くだる) 一方で、端末からクラウドに対しては 「誰が、どのような時点において、どのような電子書籍を読んでいるのか?」 という利用動態情報を取得する (のぼる) ことが可能になっている。
9:個々のデータについては、利用者自身が開示を許可したものであったとしても、複数のデータが関連付けられることによって、利用者本人が望まない事実までもが露見してしまうことも、懸念事項といえる。
⇒とは言え、その望まない事実は潜在ニーズだったりする訳で、生活者はデータをアップロードし続けるハズ。
こうなった方が多くの人にとっては良いだろう。
10:消費者のストリッパー化傾向をサービスにつなげているのが、英国Allow社の事例である。これは 「不正に自分のデータで稼がれるのは嫌ですよね? でしたら自ら管理して自分のデータを現金に変えませんか?」 というキャッチコピーを掲げるものである。
このサービスでは、ユーザが自らの嗜好や、サービスの利用状況についての登録をすると同時に、その開示範囲を設定するようになっている。
今後は、”何を公開するか?” ではなく、デフォルトでは全て公開で、”何を公開しないか?” という選択になると思う。
だな。
11:いささか極端な事例ではあるが、「消費者のストリッパー化」 そのものの事例として、チェコの売春宿 「ビッグ・シスター」 の例を紹介する。
ある36歳の男性は、フランスのメッツにある自宅から、約8時間かけてチェコのプラハにある売春宿 「ビッグ・シスター」 に通う。ここでは、無料でセックスすることができるからだ。そのかわり行為は50台以上のカメラで撮影され、インターネットで配信されることに同意しなければいけない。
「セックスはタブーではなくなった。もっと自由に考えなきゃ」 とこの男性は言う。
2005年以来、1万5000万人がここを訪れ、サービスを利用してきた。一方で視聴者は月額29.9ユーロ (約4800円) を払えば、インターネット上で素人のセックスを無制限で見ることができる。
⇒面白いなw セックスはもうちょっと陰湿であって欲しいと思うが、サイバー共産主義的サービスかもしれないw
12:オフライン空間における事象 (フィジカルな事象) を、より精緻なデータに変換していくことの重要性が、今後より一層高まっていくだろう。そして、フィジカルな事象に由来するデータとサイバーな事象に由来するデータを合わせて活用することの重要性も当然にして、増大する。
一つとしてApple Watch的なウェアラブルデバイスに紐付くデータがトレンドになる。
そして 電子皮膚なり、デバイスとして意識しないものでリアルタイムにデータを吸い上げる んだよな。
13:たとえば、「昼間新宿駅南口の前を通過した人は、○○という看板を確実に見ているはずなので、夜にインターネット上で同様の広告を再度配信する」 といった施策である。
⇒この方向は “広告効果検証” が多面的になるのを嫌う広告代理店に対して、広告主が自社ODMを所有して進化する感じがする。
自社ビルの有効活用や、不動産領域からもマーケティングビジネスへの参入はあると思う。
広告代理店も問屋として扱う事は出来るだろうが、いずれにしても “高い” という理由で媒体主と広告主の直取引を加速させるだろう・・・w
14:フィジカルな世界における強い人間関係を、現在のSNSよりも適切に抽出するデータもあるのではないだろうか。(贈答品の購入データなど)
⇒“あなたとセックスしたそうな人はこの人です” というデータもおいおい出てくるなw
15:あるデータを低コストで取得することができる事業者と、そのデータから十分に効用を引き出すことができる事業者は、必ずしも同一ではない。そのことを踏まえれば、データの事業者間流通が促進されることにより、より一層データ活用が進むと考えられる。
⇒まだ流通していればマシだし、マイレージグループや、Tポイント、ポンタポイント、といったグループに統合された上で活用されると思う。
現在の事業者は事業ドメインの範囲が狭いので、そういった橋渡しをしてデータ活用をする事になる。その “取りまとめ役” が、いわゆる勝者だと思う。
そして、その取りまとめ役は、人の限界を超えるんだよな。
16:「電子化・自動化」 の実現を目的とする中で雇用した従業員を食わせるだけの仕事が本当にあるのか冷静に評価するべきだ。クラウドは従来のICT業界の仕事を確実に減らす。数年後にどたばたと退職勧奨をするぐらいであるならば、いますぐに時代に則したセクシーな職種への転換を促した方が良いだろう。
⇒データサイエンティストは良い仕事をすればする程、自らの職を失わせる訳だしなw
故に一周回って “居酒屋” がリアルの世界では最強な気がするw
今後はやはり、”クラウド経済圏”(ユートピア) 的な意識が出てくると同時に、”どっちもリアル” という感覚になると思う。
2011年の本なので、2015年としては特に新鮮味は無いが、”まだそうなってない” と捉えるか “おいおいそうなる” と捉えるかで、今後のあり方が変わるよな。
・・・そして今から焦っても、もう遅い。”実は自動運転車は既に実現レベル” と同様、まだ表沙汰になっていない事が、世界的にいっぱいあり、いつ始まってもおかしくないテクノロジーが控えている。
馬が車になったり、ビルが建ったりといった、見た目の変化ではないので分り辛いが、井の中の蛙の範囲が変わるんだろうな。
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