-読書感想- なんでコンテンツにカネを払うのさ? / 岡田斗司夫 福井健策

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なんでコンテンツにカネを払うのさ? / 岡田斗司夫 福井健策
2011/12/1発売。2012年3月頃の読書。

個人的趣向としては、権利を持ってロイヤリティービジネスするよりも、フリーにして自由に使ってもらった上で、体験と紐付く認知を得るという考えの方が好き。いわゆるくまもん方式である。

しかし、古風なマネタイズが前提なのに、投資もしない、エログロNG、「その上でこのキャラを有名にしてくれ!」 という意味不明なオーダーが続いていたので、この本を手にとった気がする。


1:あらゆる作家やクリエイターは、絶対に模倣やパロディから出発する。そこがクリエイティブの土壌であり、厳選なのだ。禁止すれば必ず枯渇する。既得権を守るために、土壌そのものが痩せてしまったら意味がないじゃないか。

作家の 「食いぶち確保」 より、作家の卵や、作家未満ファン以上の人たちの「活動確保」の方が大切だと確信している。(岡田)

⇒このバランスは特に出版系の方々は非常に苦労されている。

ま、何か発信をする事は、ネット接続が可能であれば、無料であらゆるアウトプットが可能なので、作品そのもの (パッケージ) でマネタイズをするという事がそもそも成り立たなくなってる。音楽CDもそうだし。

食いぶち確保が活動確保になるとも言えるが、そもそも金が欲しいから活動するのではなく、何か表現したいから活動する訳なので、やはり後者の方が大事だと思う。
今、自分の作品だけで食えている人に、「もうお金は発生しないよ!」 と言ったら、創作を辞めるわけではないハズ。

2:権利者はしばしば権利を守ること自体が目的になってしまう。「権利が守られてさえいれば、そこから収入が得られなくてもかまわない」 という本末転倒な話にもなりかねません。(福井)

⇒これ、露骨にキャラビジネスを相談してくる部署そのものだなw

3:合法の範囲で、「遊び」を仕掛けられれば面白い。(岡田)

面白いですよ。その遊びにわずかのグレーさが混じっていたとしても、やってみるという発想がないと、何も変わらないでしょう。(福井)

⇒グレーが全てではないけども、白しか実行出来なくなっている従業員に期待は出来る訳がないな。

4:クリエイターがコンテンツの代価としてのお金を求めなくなるシナリオはあり得るとは、私も思います。(福井)

⇒事実、ニコ動のモチベーションは金ではない。金を得ても満たされない自尊心を、違う形で得ようという発想だと思う。

極論だがプロが作ったコンテンツは必要無くなり馴れ合いだけになってしまう。”ブロガーバズプロモーション” が売り物になるという事実が典型的。ブロガーが今の時代のプロを否定していれば先に繋がるのでまだ良いんだが、そぉいう訳でもなさそう。”無意識だが実は否定していた” であればまだ健全だが、気付いたらクリエイティブには金が回らなくなり全てが風俗になってしまいそうだ・・・。既に部分部分侵食はしている。

あえて “全てがドキュメンタリーコンテンツ” と言い換えると途端に楽しくなってくる感じもするw まぁ人間は向上心(欲)があるので、風俗になってもそこから枝分かれのパイオニアは生まれるんだろうな。そうやって変化してきたんだと思うし。(今後は金が回るかは微妙だが・・・)
コレが確実になってきてる感じするな。

5:僕は 「プロのクリエイターになって、コンテンツで稼ごうと考えるから辛いんだ」 と堂々主張しているんです(笑)。別の仕事で収入を得ながら、楽しんでコンテンツを作って発表すればいい。プロとアマの違いは、生活のために創作するか、楽しみのために創作するかにあります。(岡田)

⇒縛られず、好きな時に創作した方が自由だよな。

某音楽アーティストさんにテーマ曲を作って頂いた事があるのだが、その時は “たまたまアーティストさんの素に合うオーダーをした”(アーティストさんらしさを強調した) ので良かったっぽいが、そうでないケースもあるハズだからなぁ・・・。

6:マンガを描ける、楽器を演奏できる、小説をかける、その程度の能力で、飯を食っていこうというのかと。僕たちの社会が持つ余剰は、そういう能力のある人間をどの程度食わせていくことができるのだろうか?~中略~ 創作だけで食っていこうという態度が真面目じゃありません。

⇒まぁ本人の意思だけじゃない要素も課題だし、”何でも目指せる社会” “でもそうでもない側面もある” という矛盾に陥れている価値観が根っこではあるかな。

選べるからこそ苦しんでるからな。

7:彼女たちはベストアルバムを買って、そのビジュアル系バンドを支えるしかないんです。なぜかというと、それがファンというものだから。つまり、彼女たちが本当にお金を出したいのは、そのバンドが作るコンテンツに対してじゃない。自分たちが好きなバンドを支えているという喜びに対してお金を払っているんです。

⇒帰属意識の担保による自尊心の充足サービスだな。なんでもそぉいうもんな気がする。

8:「あ~、君500円でデジタル版買った人なの?(プッ)僕は5000円の限定版を買ったけどね」。そういうファン意識というか、好きな作品に5000円を払った自分が好きというか。(福井)

⇒CDやゲームタイトルなんかは、既にそんな感じになってるな。

9:結局、コンテンツ産業はタイムラグの中で商売していただけなんじゃないでしょうか。コピーがタダでできる、抵抗感なくできる、そういう技術が登場するまでのタイムラグにはビジネスチャンスがありますが、もう技術が追いついてしまいました。だから、もうそういうタイムラグを前提にした商売は、手じまいにしないといけない。そうでないと、大勢の人間を乗せたまま、タイタニック号みたいに沈没することになるでしょう。(岡田)

⇒確かにDVD・CD・本というのはデジタルでコピーが容易な媒体だったが、そうではないコンテンツも色々あるとは思う。

ソシャゲのプログラムはコピー出来るが、”他ユーザーとの相対的価値” は、仮に不正でアイテムを得て強くなったとして、不正なので達成感は一時的だし薄いだろう。

ソシャゲが人気なのは、ゲーム性もあるが、「こんだけ金払ったんだから・・・」 というコピー出来ない要素によって、自尊心のケアサービスとなっているとも言えるな。

生活者からしても、全てが無料というか、努力が認められないのは面白くないんだろう。



10:コンテンツホルダーやクリエイターを圧迫しているのは、海賊版とか違法コピーじゃなくて、無料の作り手がこんなにいるという事実そのものなんですよ。

⇒ニコ動において、既存のレーベル発信音楽動画を削除しまくった結果、素人の動画しかないから渋々見るようになり、結果プロのコンテンツが必要なくなったという傾向があるんだよな。

ニコ動にある作品の多くはビジネス上のマーケティングは無く、個人のドキュメンタリーコンテンツなだけなのだが、音楽レーベルのアーティストマネジメントが太刀打ち出来なかったりしている。

あと “発信者を支える受信者” という構図が “ネット上のクリエイター” の方が金が絡んでないだけに構築しやすい要素はあるな。

有名レーベルからのリリースだと 「あぁ凄い人なんだ。じゃぁ私が支えなくても大丈夫だね♪」 となりがちだ。

11:僕らが救うべきは、食うや食わずで創作を行っている貧乏なプロクリエイターではなく、無料で作品を作っているプチクリエイターなんですよ。こうした無料のクリエイターこそが、文化の多様性を生み出す最大多数です。だから、制度設計は彼らのことを最優先に考えるべきであり、マネタイズする人の最大利益を考えるのは間違っています。(岡田)

⇒ノブリスオブリージェに言及している事実から納得出来る意見だなぁ。


12:作品からの収益を次の創作の源資にしようとする現在のあり方と、作品はフリー化して、その他の手段で創作者を支えるあり方と、2つのモデルのどんなバランスで創造が一番豊かになるか。その、これからの実証にかかっている気がする。

⇒その点は既にニコ動コミュニティーが実証済みっぽいよな。

13:お金に変換すると、消費税を払わなくちゃいけないし、収益を上げたら所得税を払わないといけない。でもポイントだったら税とは無関係。こうした「貨幣忌避通貨」が近い将来、主流になると思います。すでに僕たちの日常にサブマネーは入っていて、リアル通貨よりも勝手がいいところにいろんな人が気づいている。(岡田)

⇒金よりコメント数、いいね!数の価値が上がっている今、今後を表してる感じだな。

通貨で言えば、2014年の消費税増税のタイミングで、各社のデビッドカード参入が流行だしな。

14:お金はコンテンツから得るのではなく、畑で野菜を作って売ったり、喫茶店でウェイトレスをするなりして手に入れるのがいいと。そういう労働による収入以外を当てにしないのは、奴隷制度からの解放なんですよ。(岡田)

⇒やりたい事と生活費の担保の関係性の話だ。

AZZLOは好きな事と日銭稼ぎを一致させてない。”2頭追う者は・・・” 的なジレンマはあるにはあるがw 元々広告は嫌いなので、日銭稼ぎの方は追ってすらいないかもしれないw 結構時間費やしてるけども・・・w

好きな事の、音楽、写真では金を得ようとは思ってない。特に写真は趣味に留めておきたいと強く思うな。

15:厳しいのは名声と収入がイコールになっているからです。名声があれば、直接のマネタイズができなくても食べていくことはできますよ。(岡田)

⇒名声が無いから、今後得る事も出来そうにないから、個人のマネタイズに夢中になったりする人は少なくないんだろうなぁ。

16:ユーストリームで何とかマネタイズしようとすると、奴隷制度の中に組み込まれて、そこでの身分の高さに一喜一憂することになってしまいます。(岡田)

“馴れ合いの上流” というカテゴリーもあるので、全員がそこを目指してしまいがちなのが、やはり気になる・・・。その上流に行った本人に金が入ればまだいいんだけど、ミクシィとサイバーエージェントにしか金が回らないのは危険だと思う。

とほぼ同じ事だと思う。

17:僕たちの社会は複雑化しすぎていて、小規模なコミュニティだけでは対応しきれないでしょう。まずリアルの家族、小規模なコミュニティ、そしてデジタルの親戚関係。デジタルの親戚関係は、実際の血縁ではないんだけど、お互いに家族のように思える関係を指します。最低この3層くらいないと、現代人は心の平穏を保てないのではないでしょうか (岡田)

⇒昔は地理的な近さの中でなんとかしなければならなかったが、今であれば “思想の確認” 程度であれば、地理的課題は関係ない。よって

こうなりつつある。

しかし、ネットコミュニケーション、いわゆるソーシャルメディアとかでのコミュニケーションは、盛り上がれば盛り上がるほど、絶ぇぇっっっっっっっっ対に、「じゃぁ飲もうか?」 になる。

FACE TO FACEのコミュニケーションの方が圧倒的な解像度であり情報量であるからだと思う。にも関わらず、ネットでのコミュニケーションよりも、”会った方が早い” 的な事実は、まだネット活用する上でのインターフェースが人に合っていないからだろうと思う。

“ネットコミュニケーションなんかよりも居酒屋が最強!”

と現時点では思うが、モニターを通した2次元のネットコミュニケーションが、FACE TO FACEの3次元の居酒屋に近づけるか?は1つ今後の課題としてあるだろうな。
その回答が現状はGOOGLE GLASS的なものなんだろうけど、もっとスマートな手段に昇華されるハズだとは思う。


不条理なキャラクタービジネスを相談してくる人達への返しとしては、良いヒントは特になかったがw “無報酬で人が能動的に動くしくみ” の勉強にはなったなw

7番に書いた

“帰属意識の担保による自尊心の充足サービス”

こういった事が必要で、達成されるとブランドとかいう無形資産みたいな事に達するんだろうな。

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