お金に軸足を強めて考えてみた
各媒体の話とプロの仕事 pt2的な感じの記事です。当時はコンテンツ・情報発信という視点で、テレビ以外の媒体についても考えてみたが、今回は代理店のビジネスモデル(メディアマージン)とテレビを中心に書いてみました。
テレビ広告の提案力
広告業界業績不振、テレビ視聴率低下、等、代理店とテレビ業界にはキツい話題が続く近年。テレビ崩壊と共に広告も機能しなくなるのか?的なコラム記事も非常に多い。
代理店がテレビと絡むというのは、殆どのケースは “コミュニケーション対象者に一番近い効率の良い枠をタッチポイントとして売る” という事だと思う。よって番組そのものを作る訳ではなく(たまに番組企画をしたりもするが) 極論 “旬な媒体を売れば良い” であり、長年テレビがその旬であったという事だろう。
しかし現代においては、その旬さ加減に陰りが強まってきているのが事実。CMの出稿金額が大きいだけに、なんとかテレビを “復活” させようという動きが非常に強いが、何故テレビが旬な時代があった、長かったのか?を明確にしないまま、復活を目指しても、ただの懐古主義のおっさんにしかならない。
そしていつしか “旬な媒体” ではなく “既存マス媒体を売る作業” が使命に摩り替わってしまっている・・・w
テレビ広告の利益力
確かにビジネス上はまだまだ作業効率で言えばトップな場合が多い。1億のCM枠が売れれば、マージン10%だったら1000万の利益だ。代理店内の人件費・ショバ代で1000万使うなんて、かなりの大型案件だが、そんな金額がサクっと残る。故に固着したくなるのも分かるし、狙えるなら狙うべき対象だとも思う。
但し今までの提案の仕方のまんまではお買い上げ頂き難いと思うし、1億なりの金額だと成り立つが、1000万の枠では100万の利益だ。そして労働力はほぼ同じなので、金額が小さいと実際の利益率は落ちる。下手したら赤字になる場合だってある
WEB動画サイトの台頭によって代理店はどうする???
各媒体の話とプロの仕事 に書いた通りだが、テレビは頑張ってWEB的なしくみを取り入れようとしているが、既にニコニコ動画みたいなものが存在している状況においては、ニコニコ動画が全てをかっさらっていくイメージがある。そうなると代理店はどうするのか?
ま、現在もニコニコのバナー枠を売ったりはしている訳なので、 “旬な媒体の広告枠を売る作業” の根本に則り、枠を売り続けるのだろう。ニワンゴも当然そおいう営業はある段階まではしてくると思う。
1wayのテレビでは出来ないWEB動画サイトの強み
しかし、例えばだが、“PCでエロサイトを見まくっていた後にテレビを付けたら、エロサイトのCMばかり流れるようになった” なんて未来は確実に来るハズ。もしくはティッシュのCMとかだったりもするだろうし、お父さんがリビングに来た途端に近所のキャバクラのCMが映ったりもするだろうw 家族赤面だwww
そんな事になったら テレビに限らず人を介したメディアプランニングそのものが殆ど要らない ものになるし、更にDSPの普及が起きた場合、”枠” という概念が変化すると思う。(DSPは複雑なのでまだちゃんと理解していないが)
メディア接触者だけでなく、出稿者にもオート化されたサービスとなる
広告主は予算と期間と商品名を入力すると、現在のWEBでの反応や過去のコミュニケーション活動の結果から算出した、最適な出稿プランがワンクリックで出せるようになる だろう。そして “もうちょっとCM強く” とか微調整ボタンを押して、人の思惑も多少含めた最高のメディアプランが10分ぐらいで作れる。問題なければ “発注する” ボタンを押して枠抑え確定だ。ここまで企業担当者1人で可能だ。
日本ではその実現はかなり遅くなると思うが、(今現在導入しても代理店と付き合う上では広告主もまだメリットが少ない)遅かれ早かれの話ではある。
詳細なデータがなくても、概ねの適正化は可能
そこまで高度なものでなくても、朝の駅前の看板はWANDAモーニングショットの看板で、夜になると、スーパードライの広告に差し替わるとか、そんな事は今でも出来る事だ。
“旬な媒体の広告枠を売る作業” すらもやれなくなる未来が想定されるという事。正確に言うと、“媒体をセレクトする作業が無くなる” と思う。
足並み揃えて停滞する広告業界
WEBの様なログベースマーケティング(ライフログ)がテレビやリアルな行動にも紐付けられていけば、セレクトするという人の労働を相当カット出来る。”速く高精度な自動メディアバイイングシステム” として売りだしていけば、人員削除とサービス向上になる のだが、既存の代理店は既存のビジネスモデルを維持しようとしているので、この時代の変化をチャンスに変える事は出来ないんだろうな。
GOOGLEは、”誰が今何処で何をしていて今後何をしようとしている” というリアルタイムなターゲティングの制度を高めつつ、未来に何をするか予測も含め始めている。そんな最中に 時間軸が遅過ぎで仮説の材料が薄い人的なメディアプランニングは、どう逆立ちしても敵わない だろう。
そこまでいったら、既存の代理店の6割は存在出来ないだろうw (現在の業務別リソース割合・売上的に、そんな感じがする)
“メディアの問屋” では食えない
残りの代理店内にある機能は
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1:広告以前のコミュニケーションデザイン
そもそも “広” く “告” 知するのがいいのか?という検証からスタートして整理する必要があると思う。
- 2:複合的なプロモーションプランニング
“メディアバイイングで解決出来る以外のタッチポイントで何かする。主にリアルイベントとか・・・” ではなくて、バーチャルとリアルとか別けるのではなく、バーチャル(WEB)も生活者のリアルと踏まえたプランニングが必要。※WEBをバーチャルとして “偽物” 扱いしたかったのは既存代理店側の思惑なだけだと思う。
- 3:良質なアウトプットが出せるクリエイティブブティック的なもの
最終的な主に視覚を中心としたもの作りは、(対象者に合わせた)ハイレベル・ハイクオリティーである方が良い。ここがダメだと全て無駄になる。けどここだけでは日本企業を相手にする上ではビジネスにならない。
この3つの方向が、残りの4割だと思う。
CRセクションがWEBサイトもやり切るべき
変化・強化した方が良いと思う点として
3は正直代理店内に必須の機能だとは思えない。”あったら助かる” 的なものだと思う。現実 “有名映像クリエーターがCMを作ります” みたいな提案があったりする訳なので、最初から社外の有名クリエーターに頼めば良い という事である・・・w 要は社外のCM制作会社と代理店CMプランナーの機能があまりに被り過ぎているように思う。
そして、自分から見てCRがやっている事は、ストイックに言うと “タッチポイント創出の為の納品物作り” であるので、当然WEB制作ディレクションやWEBバナー制作も本来は彼らの領域 だと思う。
今の自分の居る部署の多くの労働内容も “WEB関係の納品物作り” の割合は高いが、本来はCRの領域で彼らがやれないからやっている(部署を作った)という成り立ちだと思う。そろそろCRでWEBサイトぐらいは作り切れてもいい時代じゃないかな?CMだけやりたいのであれば、CM制作会社に行けば良いと思う。
映像、印刷、WEBといった 制作物は必ずアートディレクション的要素がある。 よって視覚への意識が高いCRが一括してやった方が 統一性もクオリティーも高くなるし、何よりも速い と思う。
※上に書いたのはWEBが “CM連動という名目なだけの素材使い回しサイト” を作る上での事。
WEBスタッフは “生活者のモチベーション設計” を企画する
WEB部署は自分が強く意識している事だが、”いいねボタン押してもらうなり、何か言及して情報拡散してもらう為のきっかけ作り” が命題だと思う。その為には手法が日進月歩で変化するWEBなので、技術的知識も ある程度は必要 だと思う。
“施策案” の構築は、やってもいい。
2もマストではないが、”有名クリエーター” と同じような意味を持つ競合が明確ではないので、まだTOWみたいな会社と張り合っても良いと思う。
“前提の共有” は、誰かがやらなければならないし、既存代理店に歩がある
1は現在の広告界の座組的に、広告主に一番近い存在として、代理店以外ではやりにくい領域だと思う。“何が悩みなのかを明確にしてあげる”という事から始める上で、外せない機能だと思う。
WEB単体での計上では実質赤字
そしてお金の面では、1と3はメディアをお買い上げ頂く際のお膳立てとおまけだったりするので、単体ではビジネスになっていない。2も微妙だ。リアル系はまだ分からないが、WEBは完全にやるだけ赤字だw
SPICEBOXが現代適応している
このように書いて気付いたのは、SPICEBOX が既に代理店の現代型をやっているように思うな。彼らは稼働時間請求が多いだろう。というかそもそものメディアマージンがないのだから当然だ。
とんちんかんな社内営業
電通はメディアマージン以外を取り組む姿勢を感じるが、ウチのグループは比較的メディアマージンを強める傾向を感じる。・・・というのも「mixiのバナーが今なら50%オフ!!!さぁ!今すぐ得意先に提案を!」みたいなメールが毎日のように届く。
営業に対してならまだ分かるが、少なくてもウチの部署の人間はあまり得意先には行かないので、「明日までにお買い上げ頂ければお得なんです!」的なタイムリーな提案は出来ない んだけどな。
夕方、外出先から会社に戻る際に遭遇するキャバクラの営業並に間違えた営業している と思う・・・。
問屋に先祖返りするならば、スタッフは要らない
電通でもなくSPICEBOXでもないウチは今後どうすんのかな。「メディア売れぇぇ!!」という号令は、初期段階の代理店に戻れと言われているような感じがする。であれば、メディアマージンと関係無い赤字部署の自分が居るような部署は潰すべきじゃないかな。
電気自動車が出てきたのに、石炭を売ろうとしている状況
・・・まとめると、メディアマージンビジネスは残るのだが、人的なメディアプランニングでのマージンという請求はなりたたない。この変化を受け入れないのであれば、代理店は現代の石炭屋と言える。
石炭屋がガス・ガソリン・電気屋を恐れて排除しようとした結果、自らの存続の可能性を失ったのと同じ事が起きるだろう。石炭屋は石炭を売っていたのではなくエネルギー原料を売っていた事を忘れた結果と同じだ。
よって金は更に厳しくなっていくのだろうが、「あの電気への移行期はキツかったね!」と言えように変化出来るのか?そのまま消えるのか?代理店の変化をガン見していこうと思っている。
自分は電気屋になるぞ!と鼻息荒く頑張りたい所なのだが、ビジネスとして回るようになる試行錯誤段階のレイヤーに常に居て、疲弊する割には儲からないで一生を終えるタイプだと思うw 電気屋がビジネスとして成立しそうになると、すぐバイオ燃料に興味が移ってしまうタイプだなw
※電気屋になるのを怖がっている代理店をバカにしているのは事実だが、まだ石炭も売れる時代なので、そこはお互いに持ちつ持たれつだ。自分が今から石炭職人を目指すのは時間軸的に意味がないしw 役割分担だと思う。同じ釜の飯食ってるんだから・・・。
タイムリーな本と出会う
・・・と、こんな事を考えていた最中に、現在の代理店ビジネスのコアであるテレビの変化を予言していそうな本を手にとった。
-読書感想- スマートテレビで何が変わるか / 山崎秀夫
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